
住み慣れた東京を離れて、自分が糸島に移住してからはや3年の月日が経ちました。
3年前の今頃の自分が頭の中で糸島を移住先として考えた理由としては、主に次の3つでした
- 豊かな自然環境
- 地方中核都市である福岡市に隣接する利便性
- 地元産の良質な食材
これら以外にも色んな判断材料はありましたが、とりあえず大きな決め手になったのが、これらの3つといえます。
で、実際に3年間住んでみてどうだったのかいわばその「答え合わせ」みたいなことを以下で述べたいと思います。
まずは糸島を選んだ理由の一つ目、「豊かな自然環境」についてですが、人口160万人の大都市(福岡市)のすぐ横とは思えないほど、糸島は海も山も 美しい自然の景観に恵まれています。
東京都内の生活環境とは敢えて比べるまでもありませんし、糸島に住む前は福岡市中心部に短期間住んでおりましたが、引っ越し直後 部屋のカーテンが未だ届いてなかった頃は、隣のパチンコ屋のネオンがまぶしくて閉口しましたし、夜中に酔っ払いの奇声で目を覚ますようなこともありましたが、今は極めて静かで落ち着いた住環境を満喫できております。夜は針の落ちる音が聞こえる程サイレントな状態なので、寝つきの悪い自分にとっては助かっています。
また、バイクを乗り回して、吹き抜ける風と共に季節の移ろいを感じたりするのにも絶好の環境といえると思います。実際、週末になると多くのバイカーたちが糸島を訪れている姿を目にします
で、糸島の恵まれた自然環境の保全に大きく関わっている要素として最近になって自分が知ったことは、糸島市のある糸島半島という土地の大方が、都市計画法上の「市街化調整区域」に指定されているということです。
「都市計画」というのは 要はその街のあるべき将来の姿を思い描いて、それを実現するために必要な規制や整備を行っていくための計画というものですが、現在、日本の国土の9割以上は「都市計画法」という法律に基づく都市計画の対象になっています (※都市計画区域及び準都市計画区域)。で、その都市計画には「このエリアはこういう風に開発していこう」という積極的な計画だけではなく「このエリアは自然保護のため開発しないでおこう」という消極的な計画も含まれています。この「開発しないでおこう」というエリアのことを法律では「市街化調整区域」と呼んでいます。本当なら「市街化抑制区域」とでも呼んだ方が分かり易いですが
そのエリアの中に住んでいる人たちへの配慮などもあってか、「調整」というオブラートに包んだ表現を使うことにしたのかもしれません。
現在、国土の約10%が市街化調整区域に指定されているそうですが、かくいう自分が今住んでいる自宅も市街化調整区域の真っ只中にあります。別に完全に人が住むことを禁止されている訳ではないのですが、それなりの要件を満たさない限り、原則として建物をたてることがNGになっているのが、市街化調整区域です。この制度のおかげで、市街化調整区域の中で暮らしていると、家の周りで騒がしい商業施設や高層住宅が乱開発されるようなことはなく、すこぶる静かで平穏な暮らしをおくることができていますし、その環境がいわば法律で保証されている、という安心感もあります。加えて、普通の住まいであれば、毎年、固定資産税に加えて都市計画税が徴収されますが、市街化調整区域の中では、都市計画税は免除されます。
今、自分が住んでいる場所の歴史を紐解くと、もともと90年代に地元のデベロッパーによって宅地用に開発され、それから10年ほど後になってから、周囲一帯もろとも市街化調整区域に指定された土地でして、そんな特殊な経緯があるため、自宅用一軒家であれば家を建ててもOKという整理になったようで、そういう例外的な措置のおかげで今、自分は自然豊かで閑静な住環境に割安の税負担で住むことができています。
とまぁここまでは良い話ばかりだったのですが、市街化調整区域に住むデメリットもあります。
そもそも都市計画上「開発しない」と決めたエリアなので、そんな場所では生活のためのインフラの整備事業は進みません。たとえば、今住んでいる自宅には下水道がつながっていないので
自宅脇に浄化槽を設置していますが、おそらく これから先いくら待っても下水道の整備は見込みようがありません。
公共交通機関も日中1時間に1本のバスがあるだけですが、新たな入居者によって地域の人口が増えることはまずないので、バスの本数や路線が増えることはまったく期待できません
コンビニやスーパーなど日用品が揃う店舗も地域内になく、市街化調整区域のボーダーをまたいだすぐ先に1軒セブンイレブンがあり、そこが自宅から最も近いコンビニなのですが、車で片道10分弱、徒歩で1時間程度かかってしまい、まったくコンビニエントではありません。
週末に観光客で交通量が増える近所の幹線道路沿いに目を向けると、いかにもコンビニにうってつけの立地がいくつも見受けられるのですが、いかんせん市街化調整区域の中なので
新たにコンビニを出店することは、例え一定の集客数が見込めたとしてもハードルは高いようです。
市街化調整区域に関して一番気になるのは、ズバリこれからの人口減少です。そもそも地域内の住宅供給量が著しく制限されるので、若年層が住む場所を見つけられず、都市部へ流出することで、地域の高齢化が加速すると共に、地域内の住民が減少し、空き家の増加が問題化します。また市街化調整区域を設定する主な狙いの一つは、田んぼや畑を保全することなのですが
高齢化による農業の担い手不足が深刻化すると、耕作放棄地が増え、土地の代替利用を図ろうにも建築制限がかかる為、そのまま放置されてしまうか、あるいは、資材置き場やダンプトラック置場、はたまた太陽光パネルの設置などに利用され、悪質な場合は産業廃棄物の不法投棄も行われる始末で、そもそも景観や生態系を守ることを目的とした制度が 逆に仇となり
蜘蛛の巣だらけの空き家や、資材置き場や 産廃処理場が立ち並び、山肌には太陽光パネルが敷き詰められた地獄のような景観を生み出すおそれがあります。
高齢化と人口減少という社会問題が顕在化している現在の状況に照らすと、さすがに20年以上前に想定した都市計画は、アップデートする余地が大いにあるはずで、それにともない市街化調整区域の指定も必要な見直しを加えるべき時にあるように思います。
次に「福岡市に近い利便性」について少し述べたいと思います。
福岡市内に直結するJR沿線に住む場合であれば、その利便性の恩恵にあずかれることは疑いの余地がないですが、それは糸島市内のごく限定的なエリアの話となります。自分の場合もそうですか、鉄道沿線から離れた場所に住む場合、そもそも福岡市内にたどりつく前に、どうやって駅までアクセスするか、その足の確保が問題となります。公共交通機関であるバスは便数も路線も限られるため、やはり基本的には自分で車を運転することが基本となりますが、そうなると福岡市方面まで外出するときは、最寄り駅周辺や、あるいは福岡市内の訪問場所において、いかに駐車場を確保するか常に意識しなければなりません。また、外出先でもし飲酒の機会が見込まれる場合は、そもそも車の運転は選択肢から除外しなければならず、タクシーや代行運転サービスの利用、あるいは福岡市内での宿泊を考えなければなりません。
そもそも福岡市内への移動に限らず、毎日の日用品の買い物や日常の用を足すためにも車の運転は不可欠なわけですが、うっかり骨折でもして運転できなくなったりすると、言うまでもなく生活に大きな支障を及ぼすので、怪我の予防や安全管理には、わりとガチで気を遣うようになります。また、スピード違反などの交通違反で、まかり間違って免許停止や免許取消なんかになろうものなら、完全に詰んでしまいますので、交通コンプラ意識は常にMAXレベルに保つ必要があります。ということで、糸島生活において、快適性と生活利便性を担保するためには、車がその重要な基盤であるということを、深く胸に刻みながら日々生活することになります。
ちなみに個人的な意見としては、できるだけすみやかに、ライドシェアが普及することを望んでやみません。ライドシェアのシステムがどのように優れているかについての説明は、ここでは省かせていただきますが、たぶん海外出張経験のあるビジネスパーソンは、国外でのライドシェア・サービスの便利さを痛感していると思いますし、もはや二度とタクシーには戻れないと感じている人も多いと思います。高齢化による交通弱者の増加が懸念される日本の地方部においてこそ、まさにライドシェアの導入は絶大な効果があると個人的には考えています。
さて、糸島移住の決め手となった理由の3番目、「良質な食材の産地」に関して今自分が思うところを述べさせていただきますと、肉・野菜・魚それぞれ質の高い食材が揃う点は、糸島生活の豊かさを実感できるポイントとして大いに強調できるところかと思います。
一方で自分の場合に関していうと、最近どうも自分で料理をするのが億劫になってきておりそもそも独り身の人間が一人分の料理を無駄なく作るのは、そこそこ難易度が高かったりするので、できれば気軽に外食できる場所が近辺にいくつもあると理想的なのですが、地元の食材を使った料理を提供する食堂やレストランがやたら少ない、というのが自分の抱く感想です。
たぶんそれなりの技能を持った料理人ならば、思わず腕がなるような地元産の食材が豊富にそして手軽に手に入れられる環境だと思うのですが、やはりビジネスとしてそれなりの集客数が見込めないと飲食店の経営は難しいのかな思われます。
この点に関し糸島の決定的な弱点としては、宿泊施設が乏しいことだと個人的には考えます
外からの訪問者は多く集まるものの、車の運転があるせいで、食事と共に酒を楽しむことができないため、どうしても飲食産業の集客力が上がらず、新鮮な地場の食材に恵まれているにも関わらず、もっぱら隣の福岡市に飲食文化の圧倒的地位を明け渡しているわけです。もし糸島市内に気の利いた宿泊施設がもっとできれば、たとえば週末に糸島に滞在し、玄界灘に沈む夕陽を見ながら、地元の食材を使った料理と共に地酒やワインを楽しむ、なんていう休日スタイルがバズる可能性はかなり高いと思いますし、それは地元の経済や雇用にとって良い影響をもたらすことは間違いありません。
そんなことを考えていると、先ほど述べた市街化調整区域の論点が再び関わってきます。もし海辺に申し分のない立地があって、そこに真っ当な宿泊施設と周辺に真っ当な飲食店を何軒か併設させるような真っ当な開発プランがあったとしても、市街化調整区域の中だとそれだけで開発は制限されてしまいます。
過疎化の進行と共に地場経済の活動鈍化とコミュニティの衰退が避けられないようなそんな地方部の閉塞した状況を打開するには、地産地消の促進につながる宿泊と飲食の産業施設の統合的開発を戦略的に後押しする都市計画の再構築と市街化調整区域のゾーニングの見直しが待ったなしの状況といえるのではあるまいかと個人的には思うわけです。
以上が約3年間自分が糸島に住んでみて、当初頭の中にあった移住の決め手の理由づけについて今の自分が考えていることです。おそらく糸島の特徴を語る上で、市街化調整区域の多さは欠かせないポイントかと思われ、土地は広くても不動産物件の出物が少ない、というのも
この特徴の現れの一環ではないかと思うのですが、今後の地域社会の持続可能性の観点から
現行の都市計画は一度見直しをかけた方がいいんじゃないかな、と思ったりする次第です。
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